ほんまありがとう!

 俺は生まれて始めて、寄せ書きというものを貰ったのかもしれない。もしかしたら昔頂いたけども、忘れているだけかな。とにかくこの代物は、想像以上に嬉しいもんやった。
 前々から日記にかいているとおり、昨日はバイト最終日。仕事が終わった後、一緒に働いていた人たちが書いてくれた寄せ書きを受け取る。ぜんぜん予想もつかない事やったから、驚きと感動がごちゃ混ぜになって、俺を襲った。色紙を手に取った瞬間、「バイトを今まで続けてよかった」と心から思った。「ほんまありがとう!」
 そしてバイトの終わりは、プラスして一人の友人との別れでもある。同じ日に仕事を辞める社員。良きダチ。俺は店の営業が終わった後、2Fフロアで待たされる。少し待つと店内に曲が流れた。ケツメイシの「トモダチ」。臭いことするなぁー心の中でそんなことを思いつつも、正直嬉しかった。「ほんまありがとう!」
 家に着き、今日のことを思い返す。今日で別れる友人は実家のある静岡に帰る。関西と関東。しばらく会えなくなりそうや。そう思ったから俺は、「トモダチ」を聞かしてくれたあいつに、引き語りの一曲プレゼントすることに決めた。
 俺はギターケースを持って、歩く。いろんなことを考えながら、いままでのバイトの思い出がよみがえる。そして…時間はもう深夜3時過ぎ、近所迷惑にならないようにかわらで歌うことに決めた。1対1。電柱の明かりだけ。
 誰か一人のために、ましてや1対1で歌をプレゼントすることは、生まれて始めてや。俺はテレながら歌ったんや。くるりの「男の子と女の子」。
曲が終わると、トモダチは泣いていた。
「ほんまありがとう!」